博士後期課程3回生の井山涼太さん(江川達郎研究室)の発表研究がAmerican Physiology Summit-2025においてAbstract of Distinction(Muscle biology部門)に選ばれました
大学院生
研究
井山涼太さん(博士後期課程3回生 認知・行動・健康科学講座 江川達郎研究室)の発表研究が、American Physiology Summit-2025においてAbstract of Distinction(Muscle biology部門)に選ばれました。井山さんの発表題目と研究概要は以下の通りです。 発表題目: The effects of advanced glycation end products on muscle atrophy induced by denervation 研究概要: 私たちの体内では、加齢や食生活などの影響により「終末糖化産物(AGEs)」という老化関連物質が蓄積します。AGEsは、細胞や組織の働きを阻害し、老化や生活習慣病に関わることが知られていますが、筋萎縮との関連については十分に解明されていませんでした。 本研究では、マウスの後肢の神経を切断して筋萎縮を誘導し、AGEsを1週間にわたり継続投与しました。その結果、まず筋肉量そのものには大きな影響は見られませんでした。つまり、AGEsの投与によって除神経による筋萎縮がさらに進行することはありませんでした。しかしながら、細胞の老廃物処理機構である「オートファジー」や、筋肉の血流調節に関わる酵素(eNOS)の働きには明らかな変化が見られました。具体的には、オートファジー関連タンパク質LC3やULK1の活性が低下し、またeNOSのリン酸化が抑制されていました。さらに、除神経筋において血管構造の乱れや血流調節異常を示唆する筋組織の発赤も観察されました。 これらの結果から、AGEsは筋萎縮自体には直接的な影響を及ぼさないものの、細胞内の恒常性維持機構や血流制御を妨げる可能性があることが示唆されました。本研究は、加齢や代謝異常に起因する筋機能障害の理解を深めるものであり、今後の基礎研究や臨床応用に向けた貴重な知見となります。
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