歴史的・文化的・社会的特性の解明を基軸とした東アジア文明の総合的な研究

(左)『資治通鑑』を読み下した朝鮮時代の句吐資料 (右)『万葉集』巻六の透写資料 観光客でにぎわう南京の中山陵(孫文の墓)
(左)『資治通鑑』を読み下した朝鮮時代の句吐資料
(右)『万葉集』巻六の透写資料
観光客でにぎわう南京の中山陵
(孫文の墓)
京都国立博物館における所蔵作品を用いた授業風景
京都国立博物館における所蔵作品を
用いた授業風景
  • 東アジアの歴史的・文化的・社会的特性の解明
  • 東アジアの言語、文学、歴史、思想、芸術の分析
  • 東アジア諸地域間の相互交流の考究
  • 東アジアの文明と他地域の文明との比較研究

 東アジアの諸地域は、地域間の活発な交流によって発展し、全体としてひとつの政治圏、社会経済圏、文化圏を形成してきました。東アジア文明講座では、日本語学・日本文学、中国語学・中国文学、日本史・中国史、中国思想・朝鮮思想、博物館文化財学といったそれぞれの専門研究領域を基礎としながら、それらを分野横断的に融合させることによって、東アジアの諸地域で育まれた言語、文学、歴史、思想、芸術を通時的かつ共時的に考究していきます。それを通して、西欧文明とは異なる東アジアの歴史的・文化的・社会的特性を総合的に解明することを目指します。東アジア文明といった視点を基軸として、歴史と文化の相互交渉的な関係を立体的に捉えるような研究を推し進めていきます。

教員紹介

太田 出 教授, 大原 嘉豊 教授, 小倉 紀蔵 教授, 尾野 善裕 教授, 熊谷 隆之 教授, 佐野 宏 教授, 須田 千里 教授, 辻 正博 教授, 長谷川 千尋 教授, 松江 崇 教授, 道坂 昭廣 教授, 吉江 崇 教授, 上杉 智英 准教授, 小野寺 史郎 准教授, 津守 陽 准教授, 永島 明子 准教授, 福谷 彬 准教授, カク ミンソク 講師
  • 太田 出 教授

  • 大原 嘉豊 教授

    日本を中心とする東洋の仏教絵画を研究領域とする。美術史学は、造形の外見的特徴を分析することで発展した学問である。この柱が様式論であり、実物観察を通じた作品記述を繰り返すことで鑑識指標が整理され、制作年代や制作地、流派、作者を明らかにしてきたのである。しかし、作品制作が人間の手になる以上、作者や注文者を取り巻く環境などから歴史に正しく作品を定位させる必要がある。この場合、一旦、観察の際に脇に置いていた歴史学を含めた関連諸学の成果を作品研究に還元・反映させていく必要が生まれる。特に、仏教絵画は仏教史の研究と不可分の関係にある。かつ、仏教が外来宗教であったため、対外交渉史の観点も必要である。また、歴史が連続のうえに展開するものである以上、通時代的な視野も必要になる。本講では、実物調査と講義を通じて仏教絵画観察及び研究における着眼点を指導することで、自ら鑑識眼を育み、複眼的な研究の視座を獲得し自立して研究を行うことができるようになることを目標とする。

  • 小倉 紀蔵 教授

    今とりくんでいるのは、東アジアの伝統的な「心」のとらえ方から発想した新しい哲学の構築です。それを私は「多重主体主義」と呼んでいます。特に「たましい」という概念は何なのか、というところを出発点として考えています。東アジアは経済的発展はしましたが、それで何なんでしょう。中国が世界のGDP第二位、日本が第三位といいますが、西洋で生まれた資本主義という考えをうまく運営した結果にすぎません。つまり西洋の世界観が世界を支配するのに手を貸しているだけ、ということもできます。それを打破し、東アジア発の世界観で東アジアを構築したいのです。

  • 尾野 善裕 教授

    本務として、奈良文化財研究所においては都城遺跡の発掘調査と土器の研究に従事しているが、永く博物館に勤務してきた関係上、出土品だけでなく伝世品をも射程に入れた土器・陶磁器の研究を志している。とりわけ、陶磁器の製作技術伝播に強い関心をもっており、しばしば混同される模倣と技術伝播の相違をいかに見極めるかについては、授業の中で詳しく論じてゆきたいと思っている。
    考古学は、物質的遺物を通して人類の過去を研究する歴史学であるとの立場から、即物的な研究にとどまることなく、歴史像を再構築することを目指している。もっとも、いかなる学問も基礎を疎かにすべきではないとの考えから、議論の前提となる遺物の編年研究には特に意を注いでいる。
    最も得意としているのは、日本の平安時代施釉陶器生産史である。ただし、専門分野を深く掘り下げて研究するには、周辺への目配りが必要であるとの認識に基づき、現在は古代から近代までの日本陶磁を主軸としながらも、東アジアからヨーロッパに至る陶磁器との影響関係についても研究を進めているところである。

  • 熊谷 隆之 教授

     日本中世史、なかでも鎌倉幕府と荘園・村落を主たる研究対象としています。相互の連関をふまえて、現代社会に与えた影響もふくめて、できるだけ通時的かつ総体的に把握していきたいと考えています。

  • 佐野 宏 教授

    古代日本語の表記と文体について、その成立過程と展開を明らかにすることが一つの研究テーマである。7,8世紀の日本語の表記は、漢字を取りこみながら、自分たちの表記法を構築している。漢字で読める世界から、日本語の文字で書ける世界へという展開にあって、多様な漢字の用法は次第に制限されてゆき、自分たちの文字が形成される。そこに広い意味での「文字遣い」、あるいは後の「仮名遣い」にも通底する規則性が胎動している。規則性の検証を通して、日本語の表記史を考えている。

  • 須田 千里 教授

    私の専門は日本近代文学で、特に、泉鏡花、芥川龍之介、久生十蘭、幸田露伴を中心に、作品の材源を解明し、作者の構想や成立過程を跡づける研究を行っています。これまで所属した院生の研究は、上記に加え、太宰治、江戸川乱歩、森鴎外、吉本ばなな、村上春樹など多種多様です。指導方針は、院生との対話を通じて作成する論文の問題点を共に考え、適切なアドバイスをすることです。なお、研究生は取りませんのでご注意願います。

  • 辻 正博 教授

     3世紀~12世紀ごろの中国史、言いかえれば、「三国志」の時代から「水滸伝」の時代までの中国社会について研究をしています。当時の社会の実態を知るために、法典から小説までさまざまな種類の文献史料を幅広く読んでいます。そのうち論文として発表するに至っているのは、政治制度・官僚制度と刑罰について調べたものです。 

  • 長谷川 千尋 教授

    日本古典文学、特に中世の連歌や和歌を中心に研究しています。連歌は、和歌、物語、説話、漢籍その他、先行する幅広いジャンルの文学的素材を取り入れ、言外に多くを込める余情に優れていて、作品を読み解く興味は尽きません。また、中世から近世にかけて、『古今和歌集』や『伊勢物語』などの古典の学問が、流派間の対立を孕みながらどのように形成され、展開していったのか、といったことにも関心を持っています。各地の図書館や文庫等に所蔵される原本の閲覧、諸本調査に基づく本文批判、未開拓資料の収集にも心がけています。

  • 松江 崇 教授

    中国語の歴史的研究に取り組んでいます。この分野の研究の魅力は、研究対象が悠久の歴史を持つ言語だということのみにあるのではありません。例えば、丹念に古代中国語文献を読解し、分析を進めていくと、ある瞬間に、それまで気づかなかった文法規則が浮かび上がってくることがあるのです。漢字という表語文字で表記されているために見出し難かった現象の「発見」に立ち会える瞬間が、この分野の研究の魅力だと感じています。古代中国語がなぜ・どのようにして現代の中国語に変化していったのかという刺激的で難解な問題を、一緒に考えてみませんか。

  • 道坂 昭廣 教授

     中国古典文学、特に南北朝から唐代の文学を勉強しています。この時代は社会全体にドラスティックな変化が生じた時代で、それにともなって人間の感情にも大きな変化が生じました。その変化が、文学ジャンルや作者構成にどのように反映しているのかといったことを調べています。まだまだ解明を待っている問題も多く、書かれた時代は古いですが新しい文学といえましょう。また、日本漢文学、江戸時代の漢文学に興味をもっています。

  • 吉江 崇 教授

  • 上杉 智英 准教授

  • 小野寺 史郎 准教授

  • 津守 陽 准教授

  • 永島 明子 准教授

  • 福谷 彬 准教授

  • カク ミンソク 講師


人間・環境学研究科パンフレット 総合人間学部パンフレット
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