吉田光さん(石岡学研究室)が関西社会学会第77回大会奨励賞を受賞しました
吉田光さん(博士後期課程2回生 人間・社会・思想講座 石岡学研究室)が2026年6月1日に第77回関西社会学会大会にて大会奨励賞を受賞しました.
- 関西社会学会第77回大会奨励賞受賞者について (関西社会学会Webサイト)
吉田さんの研究題目と研究の概要は以下のとおりです.
研究題目: 「工業実業学校の言説史――近代日本における工業専門教育の社会学的検討」
研究概要: 本研究の問題関心は,教育言説において工業系の実業学校/実業教育がいかにまなざされ,語られてきたのかという,実業教育の社会的布置を明らかにすることです.とくに1880年代後半から1890年代を中心に,国家エリート層による工業系の実業教育への「熱い期待」と,実業学校の「傍流」/「二次的」といった社会的低位という矛盾する布置は,いかなる言説によって成立・維持されていたのか,ということをリサーチ・クエスチョンとしました.本研究では,雑誌『教育報知』などを主たる資料として,そこでの言説を分析しました.
当該時期の日本社会では,実業教育は文部大臣・井上毅をはじめとする国家エリート層により,「工業国」化の要として積極的な推進が図られていました.しかし,世間一般には実業を賤業と見なす見方や普通教育こそが子弟の将来のためになるという考えが存在しているとされ,資料内の言説において国家的期待と社会的低位の乖離が生じていました.
分析の結果,帝国大学を中心とする学歴競争が過熱し入学難が生じるなかで,実業学校が過剰な上昇志向を抑制し,進学熱を捌けさせる「排熱機構」として位置づけられるようになった過程を描き出しました.
さらに本研究では,実業教育を擁護する者たちが,普通教育との明確な差異化を図り,「実用」や「実利」に特化した独自の価値体系を構築しようとする言説を展開していたことを見出しました.この差異化の言説が,「熱い期待」に応えるように実業教育の意義や価値を強調する一方で,結果として実業学校を総合知から切り離し,メリトクラティックな秩序における「傍流」としての地位に逆説的に固定化したことを論じました.