エタノール水溶液から酢酸を合成する環境に優しい新規触媒系の開発に成功しました

 酢酸は全世界で年間650万トン消費され、合成樹脂・繊維・フィルムそしてペットボトルの製造に欠かせない重要な有機化合物です。現在、酢酸は主にメタノールと一酸化炭素との反応によって工業生産されています。しかしメタノールは、枯渇の危険性もある化石資源である天然ガスを主な原料として作られています。そこで持続可能性の観点からは、メタノールの代わりに、植物由来の再生可能資源から得られるエタノールを原料とすることが望ましいと考えられます。また実際これまでにもエタノールから酢酸を得る方法は知られていました。しかしこれまでの古典的な手法では環境に与える負荷が非常に大きく、その手法で酢酸を大量生産することは実用上困難でした。 
 この問題に対して、このたび藤田健一教授(相関環境学専攻 分子・生命環境論講座)の研究グループは、入手が極めて容易で安全なエタノール水溶液を原料として用い、新しく開発したイリジウム錯体を触媒として活用することによって、上記の課題を解決する新しい触媒系の開発に成功しました。興味深いことに、今回開発した新しい触媒系では、合成化学的に有用な酢酸を効率的に得られるだけでなく、エネルギー源として利用価値の高い水素を同時に生産できるという利点もあわせ持っています。さらに本研究の触媒系は非常に高い効率で酢酸と水素を生産することが可能です。具体的には、酢酸を収率99%(理論上得られる合成物の最大量の99%)で得て、同時に水素を収率95%で得ることができました。まさに一石二鳥の触媒系が開発できたといえます。
 なお本研究成果は、人間・環境学研究科修了生の桑原雅人さん(2018年修士課程修了)が主に取り組んで得られたものです。その後、西岡正明さん(現在修士課程2回生)による検証・補足実験と、吉田真人さん(現在博士後期課程2回生)の協力によって、本研究の成果は学術論文としてまとめられ公表されました。

エタノール水溶液から酢酸を合成する環境に優しい新規触媒系

 本研究成果についてはプレスリリースを行いました。また京都大学のWWWサイトに「研究成果」として次の記事が掲載されております。そちらも合わせてご覧ください。

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