田口かおりさん「第7回表象文化論学会学会賞」を受賞
田口かおり(たぐち・かおり)(2014年3月に博士後期課程修了・博士号取得、現在は日本学術振興会特別研究員PD【東北芸術工科大学保存修復研究センター】)が、著書『保存修復の技法と思想−−古典芸術、ルネサンス絵画から現代アートまで』(平凡社)で「第7回表象文化論学会学会賞」を受賞しました(受賞式は2016年7月9日)。
本書は、近代における文化財および美術作品の保存修復にきわめて大きな影響を与えたイタリアの美術史家、チェーザレ・ブランディ(1906-1988)が提示した保存修復の基本原則を、「可逆性」「判別可能性」「適合性」「最小限の介入」という四つの観点から捉え直し、それぞれの原則が形成され応用されていく過程を、具体的な修復事例をふまえて歴史的かつ理論的に再構成したものです。その上で、保存修復の使命と倫理をめぐるブランディの思想とその影響下で行われた修復実践が、時間や同一性、記憶、アーカイブなどをめぐる哲学的かつ根源的な問いを浮き彫りにしてきた経緯を、実証的に検証しています。
なお、本書は、総長裁量経費による人文・社会系若手研究者出版助成を受け、2015年3月に出版したものです。