田村類教授が2017年度日本液晶学会賞(業績賞)を受賞しました
田村類教授(相関環境学専攻、分子・生命環境論講座)が2017年度日本液晶学会賞(業績賞)を受賞しました。受賞研究のタイトルは「キラル純有機常磁性液晶の合成と液晶の磁性に関する研究」です。日本液晶学会賞には業績賞・功労賞・技術開発賞・論文賞・奨励賞のカテゴリーがあり、業績賞は液晶分野の研究で独創的かつ先進的な研究業績を挙げた研究者に授与されるものです。なお授賞式は9月14日に開催される日本液晶学会総会で執り行われます。
研究の概要
田村教授の研究グループは、身近な機能性物質として知られている液晶の柔軟性や多彩な物性に着目し、これまで未開拓であった、分子内部にキラルな安定ラジカル部位を有するメタルフリーな有機常磁性液晶の合成に成功し、分子間磁気相互作用を中心とする液晶の磁性に関する研究を展開してきました。その結果、有機ラジカル液晶中で特有な分子間強磁性的相互作用 が発現することを発見し、この現象を 「正の磁気液晶効果 (positive magneto-LC effect) 」と命名しました。実際に、この正の磁気液晶効果によって、温水上に浮かべられたラジカル液晶の液滴が永久磁石に引き寄せられてすばやく動くことを示しました。さらに、強誘電性と正の磁気液晶効果を同時に示すラジカル液晶の合成にも成功し、これが液晶状態でしかも高温で磁気電気効果 (magneto-electric effect) を示すことを初めて見いだすなど、多彩な機能性常磁性液晶を次々と生み出してきました。このように田村教授の研究グループは、安定なキラルラジカル部位を液晶に組み込むことにより、電気極性と磁気極性を併せもつキラル液晶を創製するという独創的なアイデアを具現化し、環境にやさしい液晶科学の新たな方向性を見いだす先進的な研究を推進したことが高く評価され、今回の受賞につながりました。
(図の説明) 永久磁石に応答して水面上を自由に動くラジカル液晶液滴