伏見裕子さんが「第37回日本民俗学会研究奨励賞」を受賞しました
伏見裕子さん(2013年9月に研究指導認定退学、2015年3月に博士号取得)が、2017年10月14日に第37回日本民俗学会研究奨励賞を受賞しました。受賞対象となったのは著書『近代日本における出産と産屋――香川県伊吹島の出部屋の存続と閉鎖』(勁草書房、2016年)です。
同書は、出部屋と呼ばれる香川県観音寺市伊吹島の産屋の存続と閉鎖のメカニズムを、日本社会および島の共同体の動向に関連づけながら検討し、出部屋の存廃が社会や共同体、女性にとって持つ意味を明らかにしたものです。産屋とは、出産に伴うとされる穢れを理由に、女性が出産時ないし産後の一定期間を家族と離れて過ごした場の総称で、1970年まで利用された伊吹島の出部屋は、日本で最も遅い時期まで利用された産屋の一つです。
同書を通じて、近代以降の産屋が行政側および医療者側と共同体側との間の利害関係のなかで存続しえたということや、そこで女性が経験した葛藤が明らかにされています。そして出部屋の閉鎖過程から、産屋の長期間にわたる存続を決定づけた要因とその限界についてジェンダーの視点で考察し、日本の近代出産史のなかに産屋を位置づけています。
伊吹島で活動した助産師や、42名の女性島民およびその家族や元漁師、元保健婦等にインタビュー調査を行い、それに文献史料も加味しながら、伊吹島の出部屋について実証的かつ重層的に考察した点が評価され、今回の受賞につながりました。
なお同書は総長裁量経費による人文・社会系若手研究者出版助成金を受けて出版されました。