修士課程2回生の浪花晋平さんと戴宇強さん(吉田寿雄研究室)が国際会議OKCAT2018においてOutstanding Research Awardを受賞しました

平成30年10月26ー27日に関西大学にて行われた国際会議OKCAT2018において,相関環境学専攻 物質機能相関論講座 吉田寿雄研究室の浪花晋平さん(修士課程2回生)と戴宇強さん(修士課程2回生)が「Outstanding Research Award」を受賞しました.浪花さんの発表題目は"Visible–light driven Minisci type reaction via photoexcitation of surface peroxide species on TiO2"(酸化チタン上の表面過酸化物種の光励起による可視光駆動ミニスキ反応),戴さんの発表題目は"Support and particle size effect on the catalytic activity in carbon dioxide hydrogenation over supported platinum catalysts"(二酸化炭素水素化反応における担持白金触媒の触媒活性に対する担体と粒子径の効果)でした.

浪花晋平さん OKCAT2018 賞状戴宇強さん OKCAT2018 賞状

研究概要:「酸化チタン上の表面過酸化物種の光励起による可視光駆動ミニスキ反応」
 光触媒を使えば,光エネルギーを使った新しい化学反応を作り出すことができます. これは,光触媒は光を吸収することで高いエネルギー状態になり,普通の触媒とは全く異なる方法で化学反応を引き起こすことができるためです.
 酸化チタンは最も有名な光触媒です.これまでは酸化チタンを光触媒として利用するために,酸化チタンそのものを紫外光によって高いエネルギー状態にしていました.その場合,複数種類の化学反応が同時に起こって目的以外の生成物もできてしまうこともあります.それに対して本研究では,酸化チタンの表面に過酸化水素を作用させてできる表面過酸化物種に光を吸収させて化学反応を起こすようにしました.この手法では,酸化チタン光触媒が吸収できないエネルギーの低い可視光をつかって,表面過酸化物種だけを触媒として働かせることによって,起こる化学反応を限定することができます.
 本研究ではピリジンとテトラヒドロフランのクロスカップリング反応を扱い,上記の手法を用いることで,酸化チタン光触媒をそのまま使った場合と比べて,目的の生成物を3倍以上選択的に得ることに成功しました.
 過酸化水素は化学反応性の高い試薬であり,光触媒と同時に使った場合には化学反応の選択性は低くなる傾向があることが一般的に知られていました.これに対して,このたび本研究で発見した仕組みによって,目的の化学反応を選択的に進行させられることが示されました.本方法によって,今後さらに新しい有機合成反応が開発できると期待されます.
 
 

研究概要:「二酸化炭素水素化反応における担持白金触媒の触媒活性に対する担体と粒子径の効果」
 貴金属は触媒として非常に有用で,身近な例では自動車の排ガス浄化触媒や燃料電池の電極触媒などとして使用されています.これに対して近年,資源リスクの低減のために貴金属使用量を減らすことが求められています.そこで触媒の分野においては,貴金属をセラミックスや炭素材料(担体)の表面上に担持させて,できるだけ小さなナノ粒子として利用することや,貴金属原子1個あたりの触媒活性の効率を高める工夫が重要となります.貴金属触媒においては,担体や貴金属の粒子径が触媒の効率に影響を与えることが古くから知られています.貴金属使用量をできる限り減らすには,そのようなファクターがもたらす効果を詳細に調べて,触媒の効率の最適化を目指す必要があります.
 そこで本研究では,二酸化炭素と水素との化学反応に白金触媒を用いる際に,触媒の担体や白金ナノ粒子の粒子径が白金触媒の触媒活性にどのように影響するかを丁寧に調べました.その結果,これらの効果についての系統的な知見が得られ,同時に触媒の表面でどのように触媒反応が起こっているかについての知見も得ることができました.この触媒反応では,化学的には利用価値の低い二酸化炭素を,工業的にも有用な一酸化炭素に変換することができます.つまり本研究で得られた知見は,二酸化炭素の有効利用を促すことにつながります.

 

人間・環境学研究科パンフレット 総合人間学部パンフレット
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