田村類名誉教授が2020年の「N. M. Emanuel Medal」を授与されました

本研究科の田村類名誉教授が、2020年10月1日に「N. M. Emanuel Medal」を授与されました。N. M. Emanuel Medalは、ロシア科学アカデミー・モスクワ大学のN.M.Emanuel Institute of Biochemical Physicsを創設した著名な科学者Nikolay M. Emanuel (1915-1984)を顕彰して2007年に創立されました。毎年、物理化学と生化学の基礎研究分野で功績のあったロシア人研究者2名と外国人研究者2名にメダルが授与されます。日本人の受賞は今回が初めてです。受賞対象となった研究課題は” Research on Chemical Complexity Phenomena: Discovery of Superparamagnetic Organic Radical Soft Materials and Application to Theranostic Metal-Free Magnetic Nanomedicine”です。

田村名誉教授の研究グループは、「複雑系化学現象の発見とそのメカニズムの解明」を研究テーマとしてきました。2004年から、身近な機能性物質である液晶を外部刺激に対して敏感に感応する複雑系の散逸構造と捉えて、外部磁場および電場応答性を示すメタルフリー磁性ソフトマテリアルの開発を目指してきました。その結果、それまで未開拓であった、分子中央部にキラルな環状ラジカル構造を有する安定なメタルフリー有機常磁性液晶物質を初めて合成し、電気極性と磁気極性を併せもつキラル液晶の創製に成功しました。また2006年にこれらの物質が液晶相で強誘電性を示すことを、2008年にはこれらが超常磁性(強磁性ドメインの形成)を示すことを初めて明らかにしました。2012年にはこの超常磁性現象を「正の磁気液晶効果(positive magneto-LC effect)」と命名しました。さらに、2013年にこの強誘電性と超常磁性を併せもつ物質が、液晶状態でしかも高温で「磁気電気効果(magneto-electric effect)」を示すことを初めて実証しました。ついで、構造の異なる有機ラジカル液晶物質を次々と合成して「正の磁気液晶効果」の一般性を証明し、この現象発現のメカニズムを提唱しました。最近では、これらの磁性液晶に見られた超常磁性の発現をミセル構造やエマルション構造へと拡張し、磁気共鳴画像(MRI)法により追跡可能な抗がん剤を内包させた安定なメタルフリー磁性ナノエマルション(混合ミセル)の開発に至りました。このように、複雑系理論に基づく独創的なアイデアを具現化し、液晶科学とコロイド科学の新たな方向性を見出す先進的な研究を推進したことが高く評価され、今回の受賞につながりました。

田村類名誉教授とN. M. Emanuel Medal

田村類名誉教授 賞状

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