修士課程2回生の季原一樹さん(萩生翔大研究室)が日本バイオメカニクス学会第30回大会にて奨励賞を受賞しました
季原一樹さん(修士課程2回生 認知・行動・健康科学講座 萩生翔大研究室)が、2024年12月1日に日本バイオメカニクス学会第30回大会にて奨励賞を受賞しました。季原さんの研究題目と研究の概要は以下のとおりです。
研究題目
「音の周波数が視覚標的の軌道予測に与える影響」
研究概要
野球の外野手が打球の落下位置を予測する際、目で見た情報(視覚情報)だけではなく、打球音などの音の情報(聴覚情報)も重要な役割を果たすと考えられます。しかし、こうした聴覚情報がヒトの身体運動の制御にどのような影響を与えるのかについては十分に解明されていませんでした。視覚と聴覚が協応して物体の動きを認知することは知られており、例えば、音の高さ(周波数)が物体の位置や動きの認知に影響を与えることが報告されています。本研究では、この協応関係に着目し、音の高さが物体の動きの予測や、それに基づく上肢運動に与える影響を評価しました。
実験では、画面上で投射された標的を手を伸ばしてキャッチする運動課題を設定しました。標的は投射後に途中で消えるため、実験参加者はその後の軌道を予測して運動することが求められました。この際、標的の投射と同時に短いビープ音を再生し、その音の高さや標的の投射速度を変化させることで、運動への影響を測定しました。その結果、標的の軌道を予測しながら行う上肢運動に、音の高さが無意識のうちに影響を与えることが明らかとなりました。具体的には、音が高いほど標的が速く動くと推定され、それに合わせた運動が行われる傾向が観察されました。この効果は、特に標的の視覚情報を十分に得られない条件で顕著であり、同時に運動の開始時刻が早まり、運動速度が増加することも確認されました。
本研究は、聴覚と視覚が統合されることで運動が制御されることを明らかにしました。この知見は、ヒトが環境から得られる多様な情報を利用して運動を調整する仕組みの理解を深めるとともに、音を活用したスポーツトレーニングやリハビリテーションの技術開発に貢献する可能性があります。
