博士後期課程1回生の河野友哉さん(萩生翔大研究室)が第19回Motor Control研究会にて若手研究奨励賞を受賞しました

大学院生
研究
河野友哉さん(博士後期課程1回生 認知・行動・健康科学講座 萩生翔大研究室)が、2025年8月22日に第19回Motor Control研究会(https://motorcontrol.jp/mc19/)にて若手研究奨励賞を受賞しました。河野さんの研究題目と研究の概要は以下のとおりです。

発表題目:「冗長性を有する新規運動の学習における協調的制御の獲得過程」

研究概要:  私たちは目の前に置かれたコップに、何も考えずにさっと手を伸ばして掴むことができます。これは、日常的な動作に関しては、目で見た情報をもとに手を動かす仕組み(視覚運動写像)が脳に備わっているためです。しかし未経験の新しい動作について、こうした仕組みがゼロの状態からどのように獲得されるのかは、これまで十分には解明されていませんでした。またたとえ同じ動作であっても、私たちの体には無数の筋と多数の関節があって、人によって体の動かし方はさまざまです。新しい動作の獲得過程を明らかにすることは、なぜ一人ひとりの動き方が違うのかを理解することにも繋がります。
 本研究では、実験として、コンピュータの画面上のカーソルを、2本のジョイスティックを同時に操作して、そのときどきで設定される目標位置まで動かす運動課題を用いました。この課題は、直感的には操作が難しく、しかも同じ目標に到達するスティック操作の方法が無数に存在するように設計しました。そのため、実験参加者はまったく新しいルールを試行錯誤しながら学習する必要がありました。参加者は、最初はカーソルを思うように動かせませんでしたが、1000回以上の訓練を重ねることで、次第に目標に素早く到達できるようになりました。学習の過程を分析したところ、初期には目標ごとに異なる操作ルール(視覚運動写像)が複数存在していましたが、訓練の範囲を広げると、それらが統合されていくことが分かりました。このとき、カーソルの動き自体は参加者間でよく似ていた一方、その背後でのスティック操作には大きな個人差がありました。この個人差の起源を調べた結果、学習初期に探索的にスティックを動かしていたパターンが、その後の学習の方向性に影響していたことが明らかとなりました。この結果は、再帰型神経回路モデルを用いたシミュレーションによっても裏付けられました。
 本研究は、新しい運動を学習する際の出発点と、そこから生じる個人差の形成過程を明らかにしました。この知見は、ヒトが多様な環境で運動を学習する仕組みの理解を深めるとともに、学習の最初の取り組み方が、その後の学習を大きく左右することを示すものであり、スポーツのトレーニングやリハビリテーションの方法を改善するための基盤となることが期待されます。

人間・環境学研究科パンフレット 総合人間学部パンフレット
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