ジカルボン酸類と水素を同時に生産する新触媒システムの開発に成功しました
ジカルボン酸類は、ナイロンやプラスチックをはじめとする高分子化合物の製造原料として工業界において大規模に生産されています。例えば、6,6-ナイロンを合成するための原料であるアジピン酸は、世界的な年間生産量は400万トンを超えますが、その生産には主に化石資源に由来するシクロヘキサンが利用されています。また、シクロヘキサンからアジピン酸への変換過程においては、有害な酸化剤の使用が避けられません。さらに、アジピン酸以外のジカルボン酸の工業的生産においても、枯渇性の有機資源が利用されることが多く、製造手法も多くの場合、環境に負荷がかかるものが多いため、その改善が望まれています。
藤田健一教授(相関環境学専攻 分子・生命環境論講座)の研究グループは、天然資源から持続的に入手できるジオール水溶液を原料として用い、有害酸化剤を使用しない触媒的手法によってジカルボン酸類を高効率的に得ることに成功しました。この新触媒システムの注目すべき点は、有用有機化合物であるジカルボン酸だけでなく、エネルギーとして利用価値の極めて高い水素を同時に生産できることです。これは、「有用有機化合物」と「エネルギー源として有益な水素」とを同時生産するという、これまでの触媒的有機合成の研究領域では意識されてこなかった新しい方法論を提供するものといえます。
なお本研究成果は、人間・環境学研究科博士後期課程3回生の豊岡源基さんが主に取り組んで得られたものです。
本研究成果についてはプレスリリースを行いました。また京都大学のWWWサイトに「研究成果」として次の記事が掲載されております。そちらも合わせてご覧ください。