2021-05-18

 

大学院人間・環境学研究科(人環)の大学院生および総合人間学部(総人)の学部4回生より、研究内容や学生生活をご紹介します。
以下は2021年度のものです。大学院については、現在(2023年4月の改組後)とは専攻・講座の名称が異なっていますので、ご注意ください。

  • 藤吉春菜 [共生人間学専攻 認知・行動科学講座 林達也研究室 修士1回生]

    研究分野: 健康科学 運動生化学 骨格筋代謝

    「運動は健康に良い」「この食べ物は健康に良い/悪い」とよく言われますが、それらの詳細なメカニズムをご存知ですか?運動や食品・サプリメントの成分がどのような分子機序で影響をもたらすのか、未だ解明されていない部分が実は沢山あります。私の所属する林研究室では、運動や運動と同じ効果をもたらすと言われている成分が骨格筋に及ぼす作用について、細胞実験や動物実験を通してミクロな視点で研究しています。

    その中で私は、筋肉痛のような炎症反応が運動の効果に与える影響をテーマとしています。具体的には、炎症が起こりにくいとされるマウスに運動させ、その骨格筋を構成するタンパク質を他のマウスと比較しています。超高齢社会で高齢者の筋量低下が問題となっている現代において、効率の良い運動方法やその代替法のメカニズムを研究することは意義があると考えます。

    研究室の雰囲気は、とてもアットホームです。実験で上手くいかないことがあると先生も先輩も親身になって色々アドバイスしてくださいます。日々の雑談も、欠かせない息抜きです。コアタイムは設定されていないので自由な時間帯に研究室に来ていますが、基本的に平日は授業・実験・論文とアルバイト、休日は友人と遊んだり趣味の観劇に行ったりと、健康で文化的な充実した研究生活を送っています!

    (2021-05-18掲載)
  • 左手前が細井さん
    ゼミ内の勉強会後の食事会の様子(2019年)

    細井太智 [共生人間学専攻 数理科学講座 日置尋久研究室 修士2回生]

    研究分野: 人工知能 深層学習 画像処理 物体検出 スポーツ

    私は,AIとスポーツの融合をテーマに研究をしています.もともと,工学部の情報学科出身で,画像系の研究をしてきましたが,さらに自身の研究にスポーツの知見を取り入れて研究をしようと考え,大学院から人間・環境学研究科に進学を決めました.

    人環ではあらゆる分野の先生が揃っており,研究室の垣根を越えて研究に取り組むことができます.現に私は学部時代から続けて情報学専攻でありながら,スポーツ系の先生方とも交流をさせていただいております.スポーツ系といっても,認知的アプローチや生物的アプローチ,医学的アプローチと様々な視点があります.しかし,人環ではこれらすべての先生が揃っています.

    近年では私の研究分野である「人工知能」は,スポーツ業界に限らず,感染症のシミュレーションなど多方面で活躍を見せています.とあるノーベル賞受賞者の先生の講演会に参加した際にも,その先生は「一つの分野だけでは成功はありえない,様々な分野を勉強していたからこそ受賞できた」とおっしゃっていたのを今でも覚えています.

    私の研究の目標は,「ケガに悩むプレーヤを一人でも減らす」ことです.この究極ともいえる目標の達成を目指して,日々研究に取り組んでいます.

    大学院生といえば社会で「どうせ一つの分野だけ」という視野の狭さを揶揄されることもあります.しかし,人環では研究科の特性上,幅広い視野を獲得できる場です.京都大学らしい自由な学風の下で,思う存分研究を楽しめる最高の環境だと思っています.

    (2021-05-18掲載)
  • 児玉芙美花 [共生人間学専攻 言語科学講座 守田貴弘研究室 修士2回生]

    研究分野:言語比較 視点研究

    守田研究室の児玉です。守田研究室では言語や言語を取りまく様々な現象について、研究をしています。研究対象とする言語や現象は学生各々の興味に沿って様々であり、自分の研究意思が大切にされています。その中で私は、言語の差が人間の認知や記憶などにどの程度影響を与えるものなのかということに興味を持っており、現在は日本語、英語、日本手話という3つの自然言語を対象に、視点という観点で比較研究をしています。

    普段は研究室内に置いてある本や図書館の本を読んで知見を広げたり、自分の研究の問題点について考えたりしています。院生によって研究内容は異なりますが、定期的に行われるミーティングなどで、先生や他の院生と研究について議論したり、先生と個別に面談をして研究を進めています。ミーティングでは発表者一人一人に十分な時間を割いてもらえるため、気になることや議論したいことはとことん話し合うことが出来ます。また、研究の中で実験を行う際も研究室の仲間に協力を仰げる環境があり、研究環境として恵まれていると感じます。全体として自分のアイデアや考えを後押ししてくれる環境があり、研究意欲の高い学生が多いと感じます。

    (2021-05-18掲載)
  • 右が藤井さん

    藤井碧 [共生人間学専攻 外国語教育論講座 西山教行研究室 博士2回生]

    研究分野: 外国語教育 言語政策

    西山研の藤井碧と申します。学部時代の留学先で西山研究室の存在を知り、修士課程から京都に来ました。とりわけスイスの言語教育や、多言語主義という考え方に関心を持っています。 

    西山研のメンバーは、国内外のさまざまな出身で、言語に対する豊かな感性と経験をもっています。異文化の日本(また、京都)で朝から晩まで研究に励む院生もいれば、実際に高校や大学など教育現場で活躍しながら研究を進める方も多いです。研究のテーマやフィールドを自ら定め、それに応じて研究計画を自ら立てています。

    言語に関する研究を大まかに分けると、言語そのものに関する分野と、言語をとりまく人間社会に関する分野があります。外国語教育論講座また人環には、両方の専門家が集まっているので、さまざまな角度から研究テーマを深めることができます。もちろん、他講座や他研究科の授業を自由に取ることも可能です。さらに、星の数ほどある京大の蔵書をあたり、京大と国内外のネットワークを活用すれば、研究の可能性は無限大です。運命を感じたあなたはぜひ、一緒に勉強しましょう!お会いできる日を楽しみにしています。 

    (2021-05-18掲載)
  • 中村明日建 [共生文明学専攻 現代文明論講座 細見和之研究室 博士1回生]

    研究分野:近代西洋思想

    私は、両大戦間期にドイツ・フランスで活躍したユダヤ人思想家、ヴァルター・ベンヤミンを研究しています。とりわけ歴史哲学を中心として、彼が時代の荒波の中でどのような歴史叙述を実践していたのかが興味関心です。歴史を述べるとき、私たちは必ず過去と未来の狭間に立つことになります。現代の私たちが読む過去のテキストの言語やコンテキストは、私たちが理解し、表現するものと必然的に異なるからです。このような歴史を綴る際に起こる違和感に、ベンヤミンほど敏感だった人はいません。ならば、彼が17世紀のドイツ・バロック悲劇や19世紀のパリの都市風景に自身の歴史叙述の中で向かい合ったのと同じようにして、私たちも彼のテクストに向かい合わなくてはならないでしょう。彼の歴史哲学的な態度が逆反射して、私たち自身の歴史叙述のあり方に反省を迫るのです。

    テキストー私間の作用・反作用の中で歴史哲学的な態度を保つことは並大抵のことではありません。まず条件として、膨大な資料を手に入れることができる研究環境が必要でしょう。しかしそれだけでは十分ではありません。というのも、人文科学の研究者は往々にしてそうですが、人よりもテキストと向かい合っている時間の方が多くなり、過去に盲目的に入り込むことになるからです。そんな状態に刺激を与えてくれるのが、ともに研究を行う同僚たちです。彼らの口を通して現れる、過去の人々の言葉や批判的な意見は、私たちを現代に引き戻してくれます。このような研究を行う上での程よい均衡を担保してくれるものが、人環にはあるように思います。

    (2021-05-18掲載)
  • 平木健太郎 [相関環境学専攻 共生社会環境論講座 小畑史子研究室 博士1回生]

    研究分野:労働法

    私は小畑史子先生のご指導のもと、日本の労働法について研究を行っています。法学の中には、すでに存在する法律の文章がどのような意味なのかを検討する解釈論という分野があり、私は現在、主に年次有給休暇に関する法律について解釈論の研究をしています。とくに、労働基準法第39条第1項に定められる「6か月間継続勤務し」た労働者に年次有給休暇を付与しなければならないという条文について、「なぜ6か月間の勤務が必要なのか」などの点を考えています。最近、正社員と非正社員の格差が話題になることが多いですが、年次有給休暇の付与を継続した勤務期間で区別することも、その格差の一つと言えるかもしれません。

    ところで、上記のような研究を行うにあたって絶対に欠かせないことは、これまで蓄積された議論をしっかりと把握することです。この点、附属図書館や吉田南総合図書館をはじめとした多くの図書館があり、豊富な文献を有する京都大学は、研究環境に大変優れた場所であるといえます。私は頻繁に図書館に足を運び、必要な資料を入手したうえで、静かな院生室でその整理をしたり、他の院生の方と議論を行ったりして毎日を過ごしています。

    数多くの素晴らしい研究機関がありますが、人間・環境学研究科は最も研究しやすい場所の一つではないでしょうか。先生方はもちろん、事務の方なども丁寧に学生生活をサポートしてくれます。私自身、安心して日々研究に打ち込めています。

    (2021-05-18掲載)
  • 宿舎の灯火に飛来したガ類
    (スズメガ科Panacra busiris)
    ボルネオ島ランビルヒルズ国立公園にて

    川越葉澄 [相関環境学専攻 自然環境動態論講座 市岡孝朗研究室 博士1回生]

    研究分野: 昆虫生態学

    私が所属する研究室では、熱帯雨林の昆虫と植物の相互作用の多様性や、年中高温多湿な熱帯雨林気候の小さな変動が昆虫の数に与える影響を明らかにするために、ボルネオ島の熱帯雨林で野外調査に取り組んでいます。研究室には、研究対象となる動植物の観察・採集をするために、1年の半分以上をボルネオ島にあるフィールドステーションで過ごす院生もいます。私も、ボルネオ島のマレーシア・サラワク州の熱帯雨林に長期間滞在し、どれほど多様な蛾類が生息しているのか、蛾の幼虫がどのような餌を食べて育っているのかを解明するために、昼には蛾の幼虫を探し、夜には灯火を用いたトラップで蛾を採集するという調査を毎日のように続けています。調査で森に入るたびに新しい発見があり、熱帯雨林の卓越した種多様性と、その中で暮らす生き物たちの生態に興味が尽きることはありません。生き物たちの営みを知るために調査を行い、熱帯雨林への理解を深めていくことは、私の今後の人生の糧となる貴重な経験であると考えています。

    (2021-05-18掲載)
  • 實野晴美 [総合人間学部 認知情報学系 神崎素樹研究室 4回生]

    研究分野: 運動制御

    神崎研究室の實野晴美です。応援団チアリーダー部に所属しており、今は課外活動中心のキャンパスライフをエンジョイしています。コロナ渦の先が見えない状況の中でも、応援団に関わる全ての方々に元気と笑顔を届けるため、日々練習に励んでいます。

    応援団中心の生活を送っていますが、研究生活も充実しています。週に一度行われる研究ミーティングに参加して先輩方の研究過程を聞いたり、実験室で実験の様子を眺めたりしながら、卒論の研究テーマを探しています。他にも、先輩が論文輪読会や勉強会などを開いてくださっているので、それらに参加して興味を広げています。何かしらチアと関わるテーマで研究したいと考えていて、スタンツ(組体操のような技)のバランスに関する面白い研究ができないかと探しています。

    充実した学生生活にするかどうかは自分次第です。課外活動でも研究でも何でも良いので、好きなことを突き詰めてみてください。私は興味のあることにはとりあえず何でも手を出してみるようにしていました。そうできる環境が総合人間学部にはあります。もちろん神崎研もとてもオープンな研究室なので、少しでも興味を持った方はぜひ気軽に研究室にいらしてください。

    (2021-05-18掲載)
  • 野田慶 [総合人間学部 認知情報学系 清水扇丈研究室 4回生]

    研究分野: 関数解析・偏微分方程式論

    清水研究室の野田慶と申します.私の研究分野は解析学で,物理学に出てくるような諸々の式やその一般的性質について考えています.また,併せて数学的な扱いだけでなく物理学的な意味を理解するために物理について学んだり,数値計算を含めた計算機科学にも興味を持っています.

    清水研究室では,週に一度,院生の方とセミナーを行っています.基本的にはそこに向けて本を読んだり,問題を考えたり,本を読むために他の本を読むことがほとんどです.自分では理解出来ていたつもりでも,発表しているときや他の方から指摘されたときに理解の不十分な箇所が出てくることが常ですので,セミナーの時間は非常に貴重だと思っています.

    さて,総合人間学部のことについて少し触れさせてください.やはり総合人間学部の良いところは,様々な分野の先生方や学生の方がおられ,他の学部に比べ他の分野に触れるハードルが低いことだと思います.その分専門分野についての授業が少なくなってしまいがちですが,それも他学部の授業をある程度まで履修単位に含められる制度を用いて十分カバーすることが出来ます.自分の専門分野について好きなだけ掘り下げつつも他の分野にも気軽に触れる学生生活を,この総合人間学部でぜひ送ってください.

    (2021-05-18掲載)
  • 齋藤響 [総合人間学部 国際文明学系 細見和之研究室 4回生]

    私は入学前に深く学びたいと考える分野を絞れていませんでした。ただ、興味のある事柄を幅広く学びたいという思いがあり、総合人間学部に入学しました。入学してからはバスケットボールや将棋、麻雀、プログラミングなど様々な趣味に没頭しました。2回生時には特にバスケットボールに熱中し、サークルと社会人チームを掛け持ちしてリーグの試合に出場しました。ビデオを使ってチームでミーティングを行ったり戦略を立てたりして勝利を掴むなど、とてもいい経験ができました。学業面では、総合人間学部は自分が特に興味を持った授業や演習に絞って履修することができるので歴史、思想、哲学、日本文学、法律など様々な授業を履修しました。3回生時にホロコーストに関する授業を履修し、第二次大戦中のヨーロッパ諸国のユダヤ人虐殺の歴史的事実やその解釈を学びました。調べれば調べるほどその残虐さが浮かび上がり、どうしてこのような出来事が起きてしまったのだろうとより深く考えるようになりました。現在はホロコーストやそれに関する思想に関連したテーマで卒業研究の準備を進めています。

    (2021-05-18掲載)
人間・環境学研究科パンフレット
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