物質の構造・機能・分析・物性に関する実験的および理論的研究

図1 擦ると色が変わる色素 図2 光電子分光で測定された高温超伝導体の電子構造
図1 擦ると色が変わる色素 図2 光電子分光で測定された高温超伝導体の電子構造
図3 太陽光利用を目指した光熱変換触媒の実験
図3 太陽光利用を目指した光熱変換触媒の実験
  • 新機能物質、高機能触媒の創成
  • 新しい分析手法、測定装置の開発
  • 物質の性質を支配する物理法則の解明
  • 物質とエネルギーの変換機構の解明

 当講座では、物質の基本構成要素である電子、原子をはじめ、水素、二酸化炭素などの小分子から、有機・生体高分子、金属錯体、さらには、ナノ材料、無機固体材料、有機分子性結晶に至るまで、サイズ、形状、構造が異なる多様な物質系を研究対象としています。それらに対し、1)構造・機能の創成、2)分析手法、測定装置の開発、3)物性を支配する物理法則の解明、4)物質とエネルギーの変換機構の解明、など様々な側面から新規性を追求しています。
 例えば、1)では三次元π共役有機分子(図1)、有機分子性結晶、一次元・二次元ナノ材料などの新規構造体の創成や金属錯体触媒、固体触媒、医療用ナノ材料、電池材料、光機能性材料の高性能化を目指します。
 2)では、質量分析、核磁気共鳴、光電子分光(図2)、X線吸収分光、発光分光、走査トンネル顕微鏡などの各種分析手法や測定装置系が含まれます。
 3)では、高温超伝導、強相関電子系、冷却原子系、低次元物質などの新規物性現象の発見と発現機構の解明を目指し、実験・理論の両面から基礎的な物性研究を行います。‌
 4)では光触媒・光熱変換触媒(図3)、燃料電池・電池材料、光機能性材料などのエネルギー変換機構の解明を目指しています。

教員紹介

内本 喜晴 教授, 木下 俊哉 教授, 小松 直樹 教授, 髙木 紀明 教授, 田部 勢津久 教授, 津江 広人 教授, 中村 敏浩 教授, 藤田 健一 教授, 藤原 直樹 教授, 舟橋 春彦 教授, 森成 隆夫 教授, 吉田 鉄平 教授, 吉田 寿雄 教授, 廣戸 聡 准教授, 高見 剛 特定准教授, 浅沼 尚 講師, 大槻 太毅 助教, 小山田 明 助教, 小西 隆士 助教, 坂本 陽介 助教, 佐野 光貞 助教, 新林 卓也 助教, 髙橋 弘樹 助教, 山本 旭 助教, 渡邊 雅之 助教, 渡邊 稔樹 特定助教
  • 内本 喜晴 教授

    将来のエネルギー・環境問題解決のためには,高効率で化学エネルギーから電気エネルギーに変換できる「電気化学デバイス」の開発が必要です.当研究室では,電気化学,無機・有機機能性材料化学,エネルギー化学に立脚して,リチウムイオン二次電池、ポストリチウムイオン二次電池、固体高分子形燃料電池、水電解に関する新規機能性材料の開発、反応の解明、劣化機構の解明を行っています。大学院に進学して,一緒にこの分野を開拓する意欲のある人を募集しています.

  • 木下 俊哉 教授

    レーザーによる原子の冷却・捕獲技術によって生成した超低温の原子気体を,光の定在波の節や腹の位置に規則配列させた光格子は,系の性質を自在に制御できる理想的な量子多体系として注目されています.本研究室では,低次元系や非平衡状態にある原子気体の研究を中心に,光格子を用いた新しいスタイルの物性研究を行っています.物理の基礎的な素養があり,実験が好きな人,研究意欲の高い人を歓迎します.

  • 小松 直樹 教授

    我々の研究室では、研究の自由を重んじ、interdisciplinary な研究テーマと international な研究環境を通して、世界中どこに行っても通用する個の力を磨きます。また、研究分野、国、官民を問わず、共同研究を積極的に行い、幅広く素材の有用性を 追求するとともに、幅広い知識と経験を蓄積します。
    平成27年4月1日に発足した研究室です。まっさらな研究室でのびのびと研究してみませんか?

  • 髙木 紀明 教授

    走査型トンネル顕微鏡を使って、固体表面を舞台とするナノサイエンスの研究をしています。固体表面は、結晶の周期性が途切れて対称性が低下した特殊な環境にあります。そのため、その原子構造や電子状態はバルク結晶から予想されるものと大きく異なります。そうした特異な構造と電子状態に由来する量子物性を研究しています。また、固体表面は、自然界に存在しない低次元新物質創成の”場”でもあります。固体表面で展開される原子・分子の世界をともに探索しましょう。

  • 田部 勢津久 教授

    光を蓄える蓄光材料,高効率太陽光発電のための波長変換材料,白色LED照明用蛍光体や通信光ファイバ増幅器など次世代のフォトニクス技術を担う光機能性セラミックス材料の開発と基礎光物性に関する研究を行っています.無機化学の知識を身につけてガラス,結晶,蛍光体などモノ作りがしたい人,発光材料に興味がある人の受験を歓迎します.

  • 津江 広人 教授

    多孔性材料は,分離材や吸着材として広く活用されており,資源の持続的有効利用への大きな切り札となり得ます.当研究室では,有機合成化学,構造有機化学,有機結晶化学を基盤として,特に軽元素だけで構築された有機分子性結晶に着目し,温室効果気体やクリーンエネルギー気体を認識する有機結晶を創製するとともに,その機能発現のメカニズムについて研究を行っています.有機化合物の合成,分子構造,結晶構造,あるいは有機分子性結晶のもつ機能に興味のある学生さんを歓迎します.

  • 中村 敏浩 教授

    化学と物理学と電子工学の3分野を融合した研究を進めています。「次世代半導体材料薄膜のプロセス開発・材料解析・デバイス応用」と「プラズマ化学反応による新奇物質合成・変換技術の開発」の2つのテーマを基軸にして研究活動を展開しています。化学、物理学、電子工学はもちろん、それ以外の分野を専攻している方も含め、元気で熱意ある方を歓迎します。

  • 藤田 健一 教授

    21世紀の有機化学・有機合成化学のキーワードの1つである「環境調和(グリーン)」を念頭におき、さまざまな機能を持つ有機分子を自在に、そして100%の選択性で作ることを目指して、分子変換反応の設計と開発を行っています。
    さらに、低炭素社会におけるエネルギー源として期待の大きい水素の有効利用に貢献できる基礎技術の開発にも取り組んでいます。

  • 藤原 直樹 教授

    高圧や極低温といった複合環境下で,様々な現象(金属絶縁体転移,電荷磁気秩序,及び超伝導など)を呈する強相関電子系について核磁気共鳴を用いて研究しています.物理の基礎知識(力学,電磁気学,量子力学)があれば物性実験の経験を問いません.実験装置は既に立ち上がっているので,十分研究できる環境にあります.2004年開設来、博士卒業1名、修士卒業11名の計12名が在籍 (2023年4月)し、卒業生が第一著者の論文は、【1】Phys. Rev. Lett. & Phys. Rev. B に 8編、【2】Communications Physics, Scientific Reports に各1編【3】J. Phys. Soc. Jpn. に 4編掲載されています。院生の研究業績、進路はホームページに詳しく掲載しています。

  • 舟橋 春彦 教授

    自然科学における純粋・素朴な疑問から発する,より fundamentalな課題に臨むフロンティアを求め,対象としても手法としても広いアクセプタンスを持った基礎物理学研究を目指します.これまで<素粒子・原子核・宇宙>を対象とした実験的研究を行ってきました.新しいフロンティアとして<科学入門教育>の研究にも取り組んで行きます.研究成果の社会還元・普及として科学教室等の実践も一緒にたのしみましょう.

  • 森成 隆夫 教授

    強相関電子系における超伝導や固体中のディラック電子の輸送現象などを理論的に研究しています.テーマに関しては間口を広くとって,色々な問題に挑戦しています.本質を捉えた実験結果の解釈はシンプルなはずであるという信念をもって,適宜数値計算を活用しつつ理論的解析に取り組んでいます.物理の基礎を身につけた,泥臭い計算も厭わない,好奇心旺盛で元気な人を求めています.

  • 吉田 鉄平 教授

     光電子分光法という実験手法を使って、高温超伝導などの物質が示す面白い性質のメカニズムを明らかにすることを目指しています。手を動かして実験を行うこと、実験データに向き合って精密な解析を行うこと、そして物理現象を理解して深く考えること、さまざまなプロセスを積み重ねることで着実に研究が進んでゆきます。自分だけのデータを目の前にして推理を働かせることで、前人未踏の問題に挑んでみましょう。わからないことに対して正面から向き合い、粘り強く考えることが好きな人を歓迎します。

  • 吉田 寿雄 教授

    太陽エネルギーの有効利用や二酸化炭素の排出量の削減,環境との調和はこれからの人類にとって最重要課題です.本研究室では,太陽エネルギー変換・二酸化炭素有効利用(人工光合成)・グリーンケミストリーを可能とする光触媒と,環境問題解決のキーテクノロジーである金属触媒を,基礎からの理解に重点を置きながら研究・開発しています.このように重要で,かつ夢のある本分野に,一緒に取り組んでみませんか?

  • 廣戸 聡 准教授

    ★有機物に色があるのはなぜでしょう? これには「π電子」が深く関わっています。このπ電子を含む分子は「π共役分子」と呼ばれ、多彩な光・電子物性を示します。π共役分子はうまく「デザイン」することで、発光色や優れた導電性など望みの物性を手に入れることができます。最近では有機ELや太陽電池、分子機械など最先端の材料へ発展し、産業的にも重要な化合物です。  その中で、私たちは曲面・三次元構造をもつπ共役分子に着目し、研究を行っています。このような曲面構造は有機化学的に合成することがこれまで困難でした。しかし私たちは平面分子を曲面分子に変換できる手法を世界で初めて編み出し、それを基に様々な曲面分子を作り出しています。さらに、合成した曲面分子がこれまでの平面構造をもつ分子には見られない機能を示すことを見出し、機能材料への応用を目指し研究を進めています。

  • 高見 剛 特定准教授

    「新しい物質に機能を宿す」、との志のもと研究を行っています。新物質から生まれる物性の支配因子を解明し、物質とエネルギーの変換機能、例えば蓄電機能へと展開します。その過程では、ものすごく真剣なことと同時に、楽しくワクワクするくらい遊び心を持つことも大切です。想像しましょう、他の人とは違ったユニークなこと、例えば世界初の物質を社会に役立たせることを。好き嫌い、向き不向きで悩むよりも、飛び込んでみましょう。きっかけさえつかめば、実力は後から必ずついてきます。一緒に既存分野を進化させるとともに、新しい分野も拓いていきましょう。

  • 浅沼 尚 講師

    技術開発こそが新たなアプリケーションや知見を創出する起爆剤です。ICP質量分析法では、天然物に限らずあらゆる物質(鉱物、工業材料、医療材料)が研究対象となります(なんと1/1000000000 g程度の微量成分の測定は定量もおてのものです)。私自身、「誰も測定できないもの測定する」といった単純なモチベーションで研究しています。

  • 大槻 太毅 助教

    光電子分光という実験手法を用いて物質が示す様々な秩序状態の研究を行っています。

  • 小山田 明 助教

    フラストレーションを持つ量子スピン反強磁性体における新しい量子状態の探索。
    実験手段は、核磁気共鳴、電気伝導測定など。
    希土類化合物が主な対象物質である。

  • 小西 隆士 助教

    ソフトマターのひとつである高分子物質の非平衡過程について実験的手法を用いて研究を行っております。高分子はその名の通り分子量が大きく、低分子に比べ空間・時間スケールが大きいため、非平衡過程の実験には適した物質です。現在は高分子の結晶化過程について興味を持ち研究を行っております。

  • 坂本 陽介 助教

    皆さんが普段接している大気は、目には見えない気相分子(ガス)や微粒子で満ちており、日々大きく化学的に変化しています。例えば、皆さんが良く耳にされる光化学スモッグや酸性雨、オゾンホール、PM2.5などの大気環境問題の多くは、一度大気に放出された物質の化学変化を通じて引き起こされています。私はそういった大気物質のダイナミックな化学的循環過程をとらえることを目的に、気相分子や微粒子の反応の基礎研究を研究テーマとしています。

  • 佐野 光貞 助教

    専門は、非線形・非平衡物理学です。系の持つ非線形によって複雑な振る舞いをする物理系に興味があります。そうした複雑な振る舞いを統計理論で説明することを目指しています。皆さんの中で、非線形な系の振る舞いに興味を持った人がいるならば、一緒に研究してみませんか?

  • 新林 卓也 助教

  • 髙橋 弘樹 助教

    構造化学,特に単結晶中の分子の動的挙動について研究しています(無機物,有機物)。一般に結晶中の分子は決まった位置に配列、静止していると考えられていますが、ある程度分子構造が変化する余地があります。結晶を加熱または冷却すると、結晶中の分子構造が大きく変化して異なる結晶相が現れることがあります。この相変化の過程をX線回折を用いて分子の変化の様子を可視化する研究しています。

  • 山本 旭 助教

    環境問題・エネルギー問題の解決にむけて,高性能な触媒や光触媒の開発を行っています.無機化学や有機化学を駆使した幅広いアプローチで新しい機能をもつ触媒材料合成に取り組む一方で,その分析や解析を通して,教科書に載るような新しい現象や原理を見つけることを目標としています.様々なバックグラウンドをもつ学生大歓迎,我々と共に新しい分野を築いていきましょう.

  • 渡邊 雅之 助教

    専門分野は光物性物理学です。物質の電気的・光学的な性質を光を用いて調べたり制御したりする実験的研究を行っています。

  • 渡邊 稔樹 特定助教

    自然エネルギーを効率的に利用するためには、二次電池、燃料電池や水電解技術などの電気化学デバイスの開発が必要です。これらの電気化学デバイスの中で起こる現象を解明するために、放射光X線を用いたコンピュータ断層撮影(CT)法による解析を適用して、現象解明やより高性能なデバイスを開発するための研究を行っています。


人間・環境学研究科パンフレット
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