専攻/講座 人間・環境学/芸術文化
総人学系 国際文明学
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Message to the prospective students

人間生活における「文字」の存在感が、この “social distancing” の時代、一層増してきています。ラテン語の格言 ”verba volant, scripta manent.”(「言葉は飛び去るが、書き言葉はとどまる」)が端的に示す通り、文学の構成要素である文字の発明は、時空的距離をも一気に超える「メディア革命」でした。印刷化、電子化など文字を取り巻くメディア的趨勢を根本的に考えるとき、20世紀初頭のモダニズムと言われる時代の作家たちをスルーするわけにはいきません。 お話、物語という以前に、“literature” がまずもって "letters" (文字)であることの意味について、「現実」を「文字」を介して「言語化」「表象化」するということの意味について、徹底的に考え抜いた人たちです。その問題意識はメディアにまみれて生きる現代人と無関係ではありえず、たとえば、LINEのスタンプで遊ぶ私たちは、文字テクストの世界を豊かに拓いた作家たちの感性を継承しているとさえ言えるのかもしれません。テクストとして残された痕跡をなぞりながら、時空を超えて他人の生を生き直す──それは「オワコン」どころか、人間がずっと求めてやまないVR体験です。フィクションという営為の意味を、共に考えてみましょう。
研究分野 イギリス・アイルランド文学
キーワード イギリス、アイルランド、文学、文体、メディア
研究テーマ ジェイムズ・ジョイスやヴァージニア・ウルフなどのイギリス・アイルランド文学を対象に、作品の言語の内容と形式(言語)の関係に焦点を当てながら、テクストの新しい相貌や作家の独自性を明らかにする研究を行っている。とりわけ、文学作品はあくまで言語による「表象」であるという認識のもと、言語の記号的自律性──言語が現実を映しとろうとしながら、同時にその意図を「裏切る」さま──をテクスト上にとらえようと試みている。加えて、映画、漫画、絵画、音楽など他の表現様式にも分け隔てなく目配りすることで、広い視野からフィクションの表現様式を考察し、フィクションにおけるメディアの独自性、芸術性を見据えようとしている。このように、歴史・社会などの外在的言説と作品の「相似」以上に「相違」に注目するのが、私の研究・指導上の立場である。
代表的著書,論文等 ・Joycean Unsatisfactory Equation: Reading Ulysses Verbally (課程博士論文, 2010)
・「文学的」/「マンガ的」──いくえみ綾『プリンシパル』を読む (横浜国立大学教育人間科学部紀要Ⅱ 16, 2014)
・"The floor of the mind"──『灯台へ』のインターフェイス (Albion 62, 2016)
・ジェームズ・キャメロン『ターミネーター2』と再現(不)可能性 (英文学評論 93, 2021)
・"Floating wor(l)d"と小説的表象──カズオ・イシグロ『浮世の画家』の明暗法(キアロスクーロ)(Albion 67, 2022)
所属学会,その他の研究活動等 日本英文学会
京大英文学会
担当授業
  • 学部
  • 大学院修士課程
  • 大学院博士課程
  • 全学共通科目
経歴等 学歴
2001年 京都大学文学部人文学科卒業
2003年 京都大学大学院文学研究科修士課程修了
2006年 The University of Dublin, Trinity College M.Phil. in Anglo-Irish Literature 修了
2007年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程指導認定退学
2010年 同上修了

職歴
2007-2010年 広島経済大学教養教育部講師
2010-2011年 横浜国立大学教育人間科学部講師
2011-2020年 横浜国立大学大学院教育学研究科准教授
2020年- 京都大学大学院人間・環境学研究科准教授
人間・環境学研究科パンフレット
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