教員紹介

菅原 和孝 (すがわら かずよし) / 教授

  • 地域研究・文化人類学
専攻 / 講座 / 分野 共生文明学/文化・地域環境論/文化人類学
総人学系 文化環境学

霊長類社会の研究から出発し、南部アフリカの狩猟採集民ブッシュマンのコミュニケーション研究を続行中。日本では、会話、ジェスチャー、民俗芸能などをの分析を行なう。文化と自然、精神と身体、理性と感情といった二元論を乗り超えることが課題。担当科目である社会人類学とは、フィールドワークに基づいて、社会的存在としての人間の多様な「生のかたち」を理解することをめざす学問。知的好奇心と鋭い感性に満ちた学生諸君が、権威や常識にとらわれず日常生活の周囲からわくわくするような観察や発見をもたらすことを期待する。人生、至るところフィールドあり。

研究分野 コミュニケーションの人類学。相互行為、会話、語り、動物への認識と実践に関する民族誌的な分析。感情、セクシュアリティ、身体性に関する理論的探究。
キーワード 人類学、現象学、霊長類学、進化論、エスノグラフィー、社会性、生活世界、身体性、身体資源、感情、セクシュアリティ、婚外性関係、コミュニケーション、非言語行動、対面相互行為、身ぶり、ジェスチャー、日常会話、会話分析、言語行為、同時発話、隠喩、冗談-忌避関係、交渉の論理、生活史、語り、個人名、民族動物学、動物認識、人間と動物の関わり、グイ・ブッシュマン、セントラル・カラハリ・サン、ボツワナ、南部アフリカ、狩猟採集民、マントヒヒ、アヌビスヒヒ、雑種化、民俗芸能、伝承過程
研究テーマ 対面相互行為の構造と動態を分析することによって、「社会とはなにか」を考えてきた。ニホンザル・ハナレオスの出会いの研究では、二者の出会いと三者以上の出会いの構造的な差異を明らかにした。エチオピアにおけるマントヒヒとアヌビスヒヒの種間雑種の研究では、生得的プログラムと可変的な社会行動との関連を究明した。その後、ボツワナ(南部アフリカの内陸国)に住む狩猟採集民セントラル・ブッシュマン(自称名はグイとガナ)のもとで、民族誌とコミュニケーション論の接点で探究を進め現在に至る。 まず、個体間の近接と身体接触、シラミ取りの社交的機能、挨拶行動の慣習的プログラムを解明するととも、制度化と儀礼性を軸に理論化を試みた。それと並行して、日本人の日常会話をビデオに収録し、そこに頻発する自己接触行動を分析した。その後、グイの日常会話の分析を進めた。語りの冗長性、物語の時間性、演劇性、微視政治学的な効果について考察するとともに、同時発話に焦点をあて、従来の「情報伝達モデル」に替わる「言語の身体モデル」を提唱した。また、会話構造と社会関係のあいだの相関や、発話の連関性を分岐させる認知過程を究明した。これらの成果を総合し、西欧由来の言語行為論を相対化することを射程において、会話の社会的な組織化を解明した。
1994年以降、現在に至るまで生活史の語りを分析し、以下のような成果を得た。出来事を記念するグイの個人名に関する包括的な民族誌を提示した。グイ/ガナの社会生活の根幹をなすザークとよばれる婚外性関係を、「感情生活の弁証法」という視点から考察した。社会変容の諸側面を日常会話から浮き彫りにするとともに、外来者との接触に際してグイが駆使してきた戦略を「日和見的な従属」として特質づけた。食物規制が過去の男性成人式と深いつながりをもつことを明らかにし、グイの宗教的な世界を照射した。民族鳥類学的な資料と動物の習性に関する語りを統合して、動物に関わる認知空間の理論モデルを提示した。出来事の理解や説明の基底にある「身体配列」を把握することの必要性を強調した。
理論的な研究としては、メルロ=ポンティの現象学的身体論を導きの糸として、「心/身体」あるいは「理性/感情」の二元論を根源的に批判し、「身体化された心」を基軸に据えた新しい人類学理論への展望を示した。現在は、身体技法の伝承過程、セクシュアリティ、人間にとって動物とはなにか、といったテーマを射程において、さらなる理論探究へと布陣を整えつつある。
代表的著書,論文等 1998a『語る身体の民族誌--ブッシュマンの生活世界・』京都大学学術出版会
1998b『会話の人類学--ブッシュマンの生活世界・』京都大学学術出版会
1999『もし、みんながブッシュマンだったら』福音館書店
2002『感情の猿=人』弘文堂
2004『ブッシュマンとして生きる--原野で考えることばと身体』中央公論新社
所属学会
その他の研究活動等
日本文化人類学会
日本アフリカ学会
生態人類学会
日本人類学会・進化人類学分科会
各会員
経歴等 1949年東京生まれ。少年時代から動物学者になることを志し、1969年に京都大学理学部に入学。しかし大学闘争に直面し、「人間についてわかる」ことを目標に人類学に転向。1973年に京都大学大学院理学研究科に入学。愛知県犬山市にある京都大学霊長類研究所に学び、ブッシュマン研究の先達、田中二郎先生に出会う。宮崎県幸島のニホンザル、およびエチオピアの雑種ヒヒを対象にして、相互行為と社会のあいだの連結を探ろうとした。1980年4月に北海道大学文学部に助手として赴任。1981年3月マントヒヒとアヌビスヒヒの種間雑種の社会と行動をテーマにした論文により京都大学理学博士の学位取得。1982年よりグイ・ブッシュマン(サン)の調査を始める。1988年4月京都大学教養部に赴任。1992年10月改組により総合人間学部助教授。1997年4月に同教授。フィールドでの研究テーマと調査時期は、近接と身体接触(1982~83)、訪問と挨拶(1984~85)、日常会話(1987~1992)、個人名の民族誌と民族動物学(1992~1997)、生活史の語り(1994~現在)など。並行して、日本人の会話をビデオに収録し、自己接触や身ぶりといった身体動作と発話との関連を探る。また1999年より静岡県水窪町にて国指定重要無形民俗文化財「西浦田楽」を調査し、身体技法の伝承過程について考察中。科学研究費補助金により平成4~6年度に「変容する狩猟採集民サンの生態と社会に関する人類学的研究」(国際学術研究)、平成11~13年度に「相互行為の民族誌的記述--社会的文脈・認知過程・規則」(基盤B)、平成14年度より5年間の予定で「身体資源の構築と配分における生態、象徴、医療の相互連関」(特定領域)の研究代表者を務める。